ソウルにて、つれづれと。

つれづれと。

まぁ、8/26からソウルに居るわけですが、と言っても、10/12~21に一時帰国はしていたんですが、まぁ、期間にして2ヶ月以上ソウル生活を送っている感じなんですが、まぁあと3日で帰国です。



『가모매 カルメギ』がまぁメイン、と言っちゃ何ですが、時間としてはこれに多くを費やしていたわけですが、こちらは無事に26日間28ステージを終えまして、好評もあり、酷評もあり、いつも通りな感じではあります。
本番にほとんど付けなかったのと、俺が初めて客席で本番を観たのが千秋楽、というスケジューリングが、少なくとも酷評に繋がった一因ではあったかなと。そこね、まぁそう言うよね。みたいな。
作品としては、日本公演をやらない事には完成しないので、いつかやろうとは思っています。



日本人の演出家がこういう作品をソウルでロングランする事自体が初めてで、そういうこと含めて作品でもあるんですが、その辺は評価するけど作品は評価しないという話になると、ちょっとどうしたら良いのかわからなくはなります。
演劇なので、フィクションじゃなくて現実に起きている事として楽しんでもらえると良いかとは思っているんですが。


まぁ、そんなに酷評されているわけでは無いので、まぁ好評ではあるのですが。


といった愚痴を書きたいわけでは無かったんですが、まぁ時期的に、公演全部終わってから、プロデューサー、スタッフ達との反省会で、こんな酷評もあったみたいなこととか、今回はここが反省点だ、みたいな会議があって、こんな会議やること自体、こn劇場は大したもんだとは思うけども、まぁ、アーティストの為を思って酷評もストレートに伝えるんだろうけども、聞きたいかどうか、聞いて欲しいなぁ。こっちにも、それをちゃんと聞けるかどうかのコンディションってもんがある。そういうのどうでも良いんだったら、まぁ、それなりに凹んだり、愚痴ったり、まぁするわけです。


まぁ演出面で、あ、この効果続いてないなみたいなのはあったので、日本公演の時はゴリゴリいこうかなと思います。
それを見て、韓国での再演も考えてもらえたら良いなと。



で、まぁ今は「3人いる!」の上演真っ最中です。去年も上演した作品ですが、役者も3人とも変わり、演出もかなり方向が変わって、いい感じです。
思い切って、笑える感じにしてます、今年は。


この作品は、もちろん韓国語で上演しているわけですが、大抵日本人の書いた戯曲を翻訳して上演する場合は、韓国人の演出家が韓国で楽しめるようにアダプテーションして上演します。実際海外の戯曲をアダプテーションして上演するということは、日本に比べると韓国はかなり多いです。
どちらかと言うと日本はオリジナルを大切にして、韓国はアダプテーションを大切にするという印象はある。


日本は、外国様のありがたい作品をできるだけオリジナルの素晴らしさを損なわずに届けて欲しい、という欲求が強いんじゃないかな。韓国の方が、外国の作品を自分たちのものにするという事に寛容。まぁ、外国という括り方自体、あまり健全じゃないけど。


「3人いる!」の場合は、韓国語に翻訳して、更に日本人が演出する現代口語劇という、かなりレアな作品ではあります。
その場合、どういうことが起きるかと言うと、日本人である私から見ると、この台詞の言い方はオーバーに感じる、しかし、韓国人達は日常的にこれくらいオーバーだ、しかし、この台詞の言い方がどれくらいオーバーかというのは、韓国語の歴史や、韓国演劇の歴史や、現在の韓国演劇のシーン、演劇に於ける発話がどれくらいオーバーさを許容するのか、そういった事を踏まえないと判断できないわけで、即ち日本人である私には判断する事ができない、ということになるわけです。



文化の違いで言えば、最初のシーン、自分の家に居たら、ここは自分の家だと主張する人が入ってくる、わけですが、日本人の感覚だと、そんな怪しい相手は、なるべく刺激しないように、出来ることなら事を荒立てないで、相手が出て行ってくれれば、という発想もあるわけですが、韓国人の感覚だと、喧嘩にならないのはおかしい、ということになります。


そういう状況で、「えっと、、、、え、、何、、、してるん、です、か?」という台詞は、韓国人にとっては、リアリティに欠けるわけです。「誰だお前!出てけ!」の方が、リアリティがあるわけです。
まぁ、人によるってのもありますけども、日本人でも自分だったら喧嘩するって人もいるだろうし。


演出家にとっては、自分の感覚を優先しない、というまぁ普段あまり無い状況にはなるわけですね。みんな、演出家の感覚によって作品は作られてると思ってるわけですから。そうなると、他の人の感覚を信じる、しかないわけです。で、演出家に出来ることは、誰の感覚を信じるか、ということです。んで、まぁその辺は信頼できる人たちが周りに沢山いるので、何とかなっているんだと思います、二年連続で同じ作品上演できてるわけだし。


海外で作品作るのって大変だなぁ、みたいな感じもしますが、大切なのは、別にこれは日本で作品作っていても同じだという事です。自分と同じように世界を見ている人なんて、誰もいないわけですから。自分が感じているようには誰も感じないという前提は、外国だろうが日本だろうが同じです。自分の感覚というものを、どうやって何に使うかという事と、それによって何をしたいかということだと思ってます。


多くの人が誤解していますが、演出家の感覚と同じように観客が感じる事にはあまり価値はなく、演出家の感覚で作られたものが、観客それぞれの感覚でそれぞれに価値のある体験になるということにこそ価値はあるわけで、誰ひとり自分と同じ感覚で作品を観ていないという、当たり前の事が、外国に居ると、かなりはっきりとした形で見えるし、常に対峙しないといけないので、いい環境だとは思います。



で「3人いる!」の場合は、韓国の感覚に出来るだけ寄せるという事にはなっています。設定上喧嘩は出来ないので、いろいろ工夫してはいますが。ただ今年はかなりコメディとしての色合いが強いので、色々面白けりゃ良いじゃんみたいな事にもなっていますが。
まぁコメディ、ではあるんですけども、個人的には、「コメディを使った演劇」という位置づけです。


お客さんも結構笑ってくれていて、自分が2006年に書いた戯曲で韓国語で上演してこれだけ笑ってくれれば、まぁ大したもんだなとは思います。目に見えないものと目の前にあるものが合わさって、笑える、って事自体なかなかスゴいなと、改めて良い作品だなと思っています。
観客が作品に反応するということを改めて考えています。



とりあえず、次にソウルに来る予定はまだないので、もしかしたらしばらく来ないかもしれませんが、まぁでも、また来るとは思いますが。流石に2008年から毎年韓国で公演をしているので、そして日本で作った作品の韓国公演ではなく、全部韓国で、韓国語で作って上演しているので、韓国でも活動していると言っても良いのかもしれませんが、今回はデスロックのメンバーも全員で参加する事も出来たし、5年も活動すると、多少ソウルの演劇の事も、まぁ毎年変化はしていますが、わかってきつつあるし、今後どういった事を韓国、ソウルでやっていこうかなというのも、大分考えられるようにはなってきた気がしています。といっても全然わかっちゃいないとは思いますが。


とりあえず、「3人いる!」の本番を無事に終えたら帰国します。
そういえば今年最後の本番です。日本でも12月に一つ悪ふざけはする予定ではいますが。


大分ソウルでの生活も慣れてはいますが、月とか、日本からも同じく見えるものを見ると、嬉しくはなります。
韓国からも日本からも同じく見えるものもあるんですね。


つれづれつれづれ。